「自分の考えを、人に分かるように説明するのが苦手です。何かいい方法はありますか」

社内の定例で、メンバーからこんな質問をもらった。

最初に言っておくと、僕も最初から説明がうまかったわけじゃない。むしろ下手だった。営業を学んでいく中で、少しずつ身についていったものだ。

だから、これは才能の話じゃない。説明がうまい人は、話す順番を知っているだけだ。

01抽象 → 例え話 → 結論

僕が20歳のときに教わって、今もずっと使い続けている型がある。

これだけだ。拍子抜けするくらいシンプルだけど、この順番を意識するだけで、伝わり方がまるで変わる。

02「ビジネスとは何か」を、3ステップで説明してみる

実際にやってみる。お題は「ビジネスとは何か」。

① 抽象。「ビジネスとは、相手の問題を解決することです」

間違ってはいない。でも、これだけだと聞いている側は「……つまり、どういうこと?」となる。抽象的な言葉は正しいけれど、相手の頭の中に絵が浮かばない。

② 例え話。「例えば、あなたは今、ものすごくお腹が空いているとします。牛丼屋さんに入って、お金を払う。牛丼が出てきて、空腹という問題が解決する。だからあなたは、お金を払いましたよね」

ここで初めて、相手の頭に絵が浮かぶ。

③ 結論。「これが、ビジネスです」

最初と同じことを言っているのに、聞き終わったときの納得感がまったく違う。例え話をくぐったことで、最初の抽象的な一言が、相手にとって自分ごとの理解に変わるからだ。

03なぜ、この順番だと伝わるのか

説明が伝わらないパターンは、だいたい二つある。

  • 抽象だけで終わる:正しいけれど、相手の頭に絵が浮かばない
  • 具体だけを並べる:話は細かいのに、結局何が言いたいのかが分からない

3ステップは、この両方を一度に防ぐ。最初に「何の話か」を渡し、例え話で「絵」を渡し、最後にもう一度「何の話だったか」を渡す。聞き手は、地図を持ったまま話を聞いていられる。

僕が何か質問をされたとき、できるだけ例え話を使うようにしているのも、この型が軸にあるからだ。

04業務の報告なら、まず結論から

同じ定例で、別のメンバーから「これって、日常の業務報告でも使えますか」と聞かれた。

使える。むしろ、報告にこそ使ってほしい。

報告は、つい経緯から順番に話してしまいがちだ。そうすると、聞いている側は最後まで「で、結局どうしたいの?」が分からない。

受け取る側からすると、結論から言ってもらえるのがいちばん分かりやすい。「これ、こういうふうにしていいですか」。そのあとに「なぜかというと、今回の件がこうなって、こうなっていくので」と理由や例えを置き、最後にもう一度結論で締める。

たとえば、同じ報告でもこれだけ変わる。

よくある報告3ステップの報告
「先週お客さんから連絡があって、資料を送ったんですけど、そのあと返事がなくて、昨日もう一回電話したら担当の方が替わっていて……」「A社の件、来週もう一度打ち合わせを入れていいですか。担当の方が替わっていて、前回の話が引き継がれていないようなので。なので、改めて説明の場をもらいたいです」

左は、最後まで聞かないと何を求められているのか分からない。右は、最初の一言で相手が判断の準備に入れる。

05AIを相手に、何度でも練習できる

型は、知っているだけでは使えない。説明がうまくなるのも、結局は量をこなすしかない。

ただ、今は練習相手に困らない時代だ。自信がない人におすすめしたいのが、AIを使ったロールプレイだ。

  • まず、この3ステップ(抽象→例え話→結論)をClaudeなどのAIに教える
  • AIに、説明のお題や質問を出してもらう
  • 自分で答えてみる。声に出して、音声で入力してもいい
  • 答えられたら、「同じお題で、あなたもやってみて」とAIに頼む

型を教えたうえで同じお題をやらせると、かなり精度の高いお手本が返ってくる。自分の説明と見比べれば、どこで絵が浮かばなかったのか、どこが長かったのかがすぐに分かる。

AIは何回付き合わせても嫌な顔をしないし、夜中でも練習に付き合ってくれる。

06才能じゃなく、順番と回数

説明が苦手だと感じている人ほど、「自分は話すのが下手だから」と思い込みがちだ。でも、僕自身が下手なところから始まっている。

必要なのは、話す順番を知ることと、それを何度も繰り返すこと。それだけだ。

ちなみにこの記事も、最初に言いたいことを言って、牛丼の例え話を挟んで、最後にもう一度同じことを言って終わろうとしている。

説明がうまい人は、話す順番を知っているだけ。 次に誰かに何かを説明するとき、まずは「抽象、例え話、結論」を一回だけ試してみてほしい。