秋田で生まれ、栃木で育ち、偏差値34の大学を中退した。19歳で金融系のマルチに誘われ、20歳で約4,000万円を返す側に回り、24歳で約6億円を背負った。それでも彼は、自分の会社に「イケメン」という名前をつけた。
01「かっこいい」を、感覚から指標に変える
まず、社名の話から聞かせてください。なぜ「イケメン」なんでしょうか。
僕らは「かっこいい」とか「イケメン」を、感覚で使う言葉じゃなくて、明確に定量化された指標にしたいと思っているんです。イケメンの定義を、外面・内面・経済面という三軸に置き換えていて。この三軸がすべて基準点以上になって、はじめて本当のイケメンだと言えると思っていて。勝手に定義しているんですけど。
その発想は、どこから来たんですか。
20歳のときです。詐欺に遭って4,000万円くらいの被害に遭ったときに、友達と「お金持ちって、本来イコール信用持ちのはずだよね」という話になって。もともとお金って、魚三匹と肉500グラムが等価だった時代に、その信用を担保するために生まれた存在じゃないですか。じゃあなんでお金持ちが信用持ちじゃないんだろう、と。信用情報が可視化される社会をつくりたいよね、という話を、起業するときにしていました。
「信用の可視化」から「イケメン」までは、まだ距離がありますね。
信用情報の可視化って、抽象度がかなり高いんですよ。なので、もう少し自分がやりたいジャンルに寄せて──かっこいい選択をし続けられる、そんな経済圏と仲間たちをつくろう、というのでイケメンをつくりました。理想を分かりやすく言うと、僕が今まで積み上げてきた信用が数値化されていて、会った瞬間にお互い「85点」みたいに分かる世界観です。
024,000万円と、6億円
1度目の逆境について教えてください。
大学1年、19歳のときです。後輩に海外の金融系マルチに誘われて。その子がまだ17歳で登録できないから、名義を貸してほしいと言われたのが入り口でした。上の人たちがいる会に行ったら、ちょっとキラキラして見えて、それがかっこいいと思っちゃったんですよ。それで自分でも活動を始めて、半年くらいで200人ほどの組織になったんですけど、そのマルチ自体が飛んでしまって。
自分が飛ばしたわけではないですよね。
そうなんですけど、金融系なのでみんなからお金を預かって運用する形だったので、すごく罪悪感があって。「俺が返していくから待っててくれ」と言って、フリーの営業マンになるしかないな、と。僕、結構変に真面目なので。今でも分割で振り込み続けている方がいます。
そこから2度目、6億円。
23歳のときにご縁があって、コールセンターを100名規模でやっている会社の役員に入れてもらって。コロナ禍で飲食店さんが外に出ていく流れがあったので、キッチンカーの事業を任されました。飲食店さんを催事に斡旋して、ただ土地代が出せないので、僕らがファクタリングで負担するという構図でやっていたんです。
その資金の集め方が、特殊だったと。
僕個人がまず金銭消費貸借契約を巻いて数億を集めて、それを社長個人に貸して、社長が役員として会社に貸し付ける、という形でした。「上場を狙う上で大量の債権者の名前が載るのが嫌だ」と言われて。当時23歳だった僕は「ああ、なるほど」となってしまって。結果、融資の契約が全部僕に紐づいていた状態で、最終的に社長が飛びました。
毎日8時間謝罪をして、残りの8時間以上働いて、それで稼いだお金で毎月400万円を返す。そういうループに、2年くらい入っていました。
その2年で、何が変わりましたか。
とにかく無駄を省くようになりました。時間が本当にないので、一挙手一投足すべてが無駄じゃないかと、常に自分に問いかけていて。要らないものを削いでいく、捨てていくという部分を、あそこで学びました。情で手伝うとか、素敵なサービスだから手伝うとか、そういうのも自分のゴールから考えると回り道になってしまうので。
折れなかったのはなぜですか。
自分の身の回りに降りかかる不幸って、全部乗り越えられるレベルでしか降ってこないと思っているんですよ。4,000万円の経験があって、経営者としての経験もある程度あって、たまたま生まれ持ったメンタルの強さもある。だからこそピンポイントでレコメンドされた金額が6億なんだろうな、と。……と言いつつ、最初から冷静だったわけじゃなくて。ストレスがかかりすぎると思考停止して、感情もなくなるので、「まあこれ無理だよなあ、じゃあ明日こうやって謝るか」みたいな感じになってくるんです。とにかく生きる選択をただ選んでいくだけ、みたいな。
03「かっこいい選択」とは、逃げないこと
理念の「かっこいい」は、具体的には何を指すんでしょうか。
僕の場合、いろんな詐欺に遭ったときに、かっこいい選択肢をなるべく取るようにしてきたんですよ。逃げない、誠実に対応する。当たり前のことなんですけど、そのかっこいい選択肢って、けっこう努力とか噛みしめる行為が必要で。それができない人が多いから、詐欺に変わるという印象があって。だったら、かっこいい選択肢だけをずっとし続けられる仲間や経済圏をつくったら、かっこよくなるよねと。
社員の方にも、その言葉は使いますか。
使います。「自分に、今の行動がかっこよかったか聞いてみ」と、よく言います。今の選択に妥協があったらかっこよくないよね、感情的に対応したクライアントワークは果たしてかっこいいのか、と。けっこうこの一言で片付くことが多いんですよ。
難しさもありそうです。
主観のかっこよさじゃダメなんですよね。相手から見て、客観的にもかっこいい選択でないといけない。そこはまだ僕自身、言語化しきれていないです。言い切るには、僕側のデータが足りない。
アップグレードし続ける。そこにゴールはない、みたいな感じです。
04結果が出ないのは、上流のせい
組織をつくるうえで大事にしている価値観は何ですか。
属人性が高いものって、あんまりかっこよくないと勝手に思っていて。だから仕組み化はかなり意識しています。あと、たとえば営業で雇った子が結果を出せないとき、それはその子の上、つまり経営側のせいだと思っているんです。今なら僕のせいです。渡している武器とか、営業の動線とか、当たりに行く層のペルソナとか、上流の工程がミスっているから部下が結果を出せない。
一般には、詰める上司のほうが多いですよね。
僕自身がそういう上司ばかりだったんですよ。「結果が出ないなら寝るなよ」「量が足りてねえだろ」と。で、僕はプレイヤーとしてはたまたま能力値が高かったから結果を出せたタイプなんですけど、じゃあ自分が100人を率いたときに、成立するのが2〜3割だとしたら──2〜3割の期待値で経営している時点で、こっちがミスってるじゃないですか。誰がやっても同じ結果が出せるように、そもそもそういう市場に手を出すべきだと思っています。
だからレッドオーシャンには行かない。
レッドオーシャンに行っている時点で、無駄だなと思います。属人性の高い営業マン頼りでレッドオーシャンで戦うこと自体がミスっている。僕が今やっているビジネスはほとんどブルーオーシャン系で、そもそもレッドオーシャンに進出しないんです。そのほうが僕も部下も負担が下がるし、会社の成長も速くなる。
うちで働いている子は、あんまり責任を言われないと思います。全部僕らが、ほぼ経営陣が責任を被っているので。
ノルマの話は出ますか。
ブルーオーシャンで仕事をすると、余計な変数が生まれにくいんですよ。今月ちょっと足りていなくて沈んでいるときに「今月どうすか、ノルマ」と言うと、「いやちょっと今やってるんで」となる。この変数、あんまり要らないなと思っていて。お互い気持ちよくやるためには、そもそも市場の選び方が先だと思っています。
05コミュニケーションは、いまだに課題
マネジメントで心がけていることは。
そこは正直、課題です。僕、けっこうロボットみたいな感じになっちゃっていて。コミュニケーションが下手なんですよ。冷静にいろいろ処理してしまうのは逆によくなくて、感情的に心を揺さぶる発言があまり得意じゃない。自分から言うのも恥ずかしくて言えないタイプなので、お酒の力を借りてワクワクした話をする、みたいなことしか今はできていなくて。だから飲みにはよく行きます。残業している子がいたら「この後行くか」と声をかけたり。
イライラすることもありますか。
あります。もともと「なんでできないの?」と思ってしまうタイプで、自分が分かっている頭で指示してしまうことが多かったので、それはなるべくやめて。イライラしたときは、AIにめっちゃキレるんですよ。ChatGPTが冷静に回答してくるので、「あ、これちょっと人にやっちゃダメだ」となる。
06折れた人が、うれしい
どんな人がイケメンのカルチャーに合うと思いますか。
失敗とか挫折を経験してきている人に入ってほしいですね。ちょっとでもピンと来た、挫折経験の多い人とは、ぜひ一度対面で面談したいです。僕、たぶんマネジメントがあまりうまくないので、ピノキオみたいになっている子を教育するのが得意じゃなくて。もう折れた人がうれしいですね。牙の抜けた肉食動物も大歓迎です。
具体的には。
「めちゃくちゃ自分すげえと思ってたけど、世の中にボコボコにされました」みたいな。元々めちゃくちゃイケイケだったのに、今後どうしようか全く分かっていない、みたいな。そういう方はすごくいいと思います。内面がイケメンで、外面と経済面がダメな子。それがうれしいです。
年齢の幅は。
あまり意識していないです。若すぎると最低限のビジネスマナーから教えることになるので、20代後半以降だとありがたい。30代はうれしいですし、40代でも頭が硬すぎなければ大丈夫です。今、43歳のメンバーもいます。属人性をなるべく排除しているので、年齢はそこまで関係ないんです。
採用の基準は固まっているんですか。
正直、僕らはまず採用自体が初めてなんですよ。これまではリファラル、紹介だけで組織をつくってきたので。なのでまだ勉強フェーズで、あまりにもイカれていなければ一旦入ってもらって、そこで僕らの判断軸の目盛りをどんどん細かくしよう、という感じです。とにかく入ってみてもらって、僕らが経験を積みたい。
07若い人に伝えたいこと
人に迷惑をかけまくっていいと思っています。ただ、かけた以上にその人に返せるなら、ケツを拭き切れるなら、どんな選択もしていい。それが約束できない失敗と迷惑は、絶対にやるな。
やりたいことが見つからない、という人には。
やりたいことがないって、そもそも情報を知らないだけなんですよ。やりたくないことも含めてやっていく中で解像度が上がって、それが脳汁につながったりするわけじゃないですか。だからとにかく、動きが足りない。もっと動いて、もっと情報を取りに行けば絶対に生まれます。
事業の中身と、未経験からエンジニアを育てる仕組みについては、後編で聞いた。




